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2016年10月30日日曜日

「MBAで頭痛のガイドラインを読む.Part2」 headache

4.各タイプの治療
市販薬が無効である場合の❶緊張型頭痛、❷中等度以上の片頭痛、❸群発性頭痛では、処方箋に基づく医療用医薬品を使用します。



4-❶.緊張型頭痛の治療
緊張型頭痛の発症機序は、いまだ不明です。分類としては、反復性のものと、慢性のものに分けられています。反復性のものは、首・肩の筋肉の緊張や痛み、手足の感受性が過敏であることが原因と推測されています。慢性のものは、ストレスなどによる交感神経の血管収縮、抑うつ気分、場合によっては、「痛くないのに痛いと錯覚している」(中枢痛覚処理異常)こともあります。痛みを抑える脳の機能が働いていないとも表現されています。
急性期の薬物療法では、カロナールやNSAIDs(ロキソニン、ブルフェン、ボルタレンなど)と呼ばれるものが使われます。これらは市販薬で使われている成分でもありますが、医療用は市販薬よりも用量の上限が高い場合が多く、効果的です。カフェイン(成分名)の摂取も有効とされています。
予防治療の薬物療法では、ストレスや精神的緊張状態を和らげる目的で、抗うつ薬(強く推奨されているのはトリプタノール)や抗不安薬(コンスタンやソラナックス)が使用されています。そのほか、筋緊張緩和のために、筋弛緩薬(テルネリン)も使用されています。
非薬物療法では、筋電図バイオフィードバックが強く推奨されています。これは筋電図を用いて、患者に筋緊張を自覚させ、コントロールを促す方法です。ただし、緊張型頭痛の全てに有効かどうかはいまだ不明です。理学療法の頭痛体操は、推奨されているものの、他の治療との併用が原則です。リラクゼーションやマッサージ、超音波および電気刺激、針灸などは推奨されていません。

4-❷.片頭痛の治療
片頭痛は、①片側性、脈動性の頭痛、②日常的な動作により頭痛が増悪、③中等度~重度、④悪心や光過敏・音過敏を伴うこともある、を特徴とします。「片頭痛は5分以上前からの前兆があること」が知られていますが、前兆がない片頭痛もあります。
発症機序の詳細はいまだ不明ですが、セロトニンとその受容体、三叉神経終末から放出されるCGRP(カルシトニン・ジェネレイト・ペプチド)が発作の疼痛に密接に関与していることが知られています。
 急性期の薬物療法では、軽度~中等度では、緊張型頭痛と同様に、カロナールやNSAIDsが使用されます。これらが無効である場合、また中等度以上の場合は、トリプタン製剤が推奨されています。イミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト、アマージの名前で発売されています。イミグランは点鼻式も発売されています。推奨は、これらの薬を、発症より1時間以内の使用です。程度に関わらず、制吐薬(プリンペラン、ナウゼリン)の併用は有効です。
 予防治療の薬物療法では、抗てんかん薬(デパケン、セレニカR)、抗うつ薬(トリプタノール)、β遮断薬(インデラル、セロケン)が強く推奨されています。この他にもCa拮抗薬(テラナス、ミグシス)も推奨されています。ACE阻害薬(ロンゲス、ゼストリル)、ARB(ブロプレス)は降圧剤でもあり、高血圧症のある片頭痛の方へ、使用が推奨されています。
片頭痛の誘発因子も疫学調査から知られています。ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠、月経周期、天候の変化、温度差、におい、空腹、アルコールなどです。ただし、アルコール以外は、緊張型頭痛の誘発因子でもあります。食品の誘発因子では、代表的なものとして、赤ワインやチーズ、チョコレート、柑橘類、ナッツ類が有名です。生活習慣では、脂質の多い食べ物、コーヒーやお茶の消費が多い人に片頭痛持ちの方が多いことが報告されています。これらはいずれも個人差が大きく、また、個人に固有であると指摘されています。すなわち、ある方に片頭痛を誘発する因子が、別の方にも片頭痛を誘発するとは限りません。
 片頭痛では、家系内発症の例が多く、遺伝的素因の関与はほぼ確実です。しかし、まだ確実な原因遺伝子は見つかっていません。

4-❸.群発性頭痛の治療
群発性頭痛は、短時間、片側性の頭痛発作の他に、結膜充血、流涙、眼瞼浮腫、鼻漏などの頭部副交感神経系の自律神経症状を伴うことが特徴です。夜間、睡眠中に激しい頭痛を起こすことが多いのも特徴です。大酒飲みやヘビースモーカーに多いとされています。発症機序は、三叉神経-副交感神経反射の活性化であることはわかっていますが、どのようにそれが起こるのかは諸説あります。
 急性期の治療では、イミグランの皮下注射は有効性が確立されています。イミグランキットを持ち歩く方も多いようです。その他、純酸素吸入法も強く推奨されています。
 群発性頭痛の予防には、有効な治療法が少ないのが現状です。Ca拮抗薬(ワソラン)やステロイドを用いることが多いようです。
 群発性頭痛も、有意に家系内発症例が多く、遺伝的素因が関与する可能性は高いです。ですが、原因遺伝子は見つかっていません。

4-❹.その他の一次性頭痛
その他の一次性頭痛は国際的に、一次性穿刺様頭痛、一次性咳嗽性頭痛、一次性労作性頭痛、性行為に伴う一次性頭痛、睡眠時頭痛、一次性雷鳴頭痛、持続性片側頭痛、新規発症持続性連日性頭痛に分類されています。これらは診断基準について確立されているものの、発症例が少なく、治療法は確立されていないようです。

5.終わりに

 以上、慢性頭痛の診療ガイドライン2013を元に解説を試みました。私たちができることとして、頭痛ダイアリーを付けることをご紹介します。頭痛ダイアリーは、①日数、②どのような性状、③痛みの強さ、④痛みの持続時間、⑤頭痛以外の症状、⑥誘発した因子、⑦服薬状況、⑧生活支障度などを具体的に記録しておく日記です。生活環境の変化、服薬や月経との関係を記録することで、適切な医療を受けられます。医療者に適切な情報を伝えることは、ご自身の病気を早く治すことにつながるのですね。(加)

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